2020年12月30日水曜日

年間ベスト廃盤レコード2020

こんばんは。
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今年も早いもので、残り1日。

 言わずもがなですが、今年はみなさんとてもタフな1年になったかと思われます。僕もそうでした。こんな時節でやはり家にいることが多い1年でした。なかなか以前のように週に何度もレコード店へ足を運ぶのが難しく、オブスキュアな未知の音楽との出会いは難しかったのですが、以前から探していた作品をじっくり選んでネットで注文することが多かったです。
 レコード店に足を運ぶと、ついつい欲しくも無い盤を抱えて家に帰ることが多いのですが、今年はそれ故かなりエッセンシャルなレコード・ディグが出来たと感じます。またトレンド的な流れもストップしたのもあり、家にあった旧譜を聴き直すことも多かったです(自分の家のレコード棚が世界中のどのレコード店よりも自分の好きなレコードが集まっている!)。やはり、明るい音楽や言葉の強い音楽、騒がしい音楽はあまり針を落とす気になれず、自然と静か目な作品ばかり手が伸びていたように感じます。アンビエント/ニューエイジのリヴァイヴァルはこの10年でトレンドのピークを迎えたように感じていましたが、こうした世界もあってかこのままゆったり以前よりもスタンダードな音楽として受け入れられていくような雰囲気も感じます。エチオピアをはじめ、非西洋圏の音楽、音数の少ない静謐なジャズも今年はよく聴いていました。普段集めていた自主盤S.S.W.は、 足繁く店舗に通うことが出来ず、安価で発掘するのが難しくて今年はあまり良い収穫はありませんでした...。

 そんなわけで、毎年恒例ですが、今年入手した中古レコードの中で、お馴染みの定番アイテムから、よく分からないものまで、心に残ったお気に入りの作品をただただ自慢する『年間ベスト廃盤レコード』を書いてみようと思います!



Haruomi Hosono ‎– Mercuric Dance
Monad Records ‎– 28MD-2
1985

 ずっと後回しにしてしまっていましたが今年の成果の1つとしてはモナド観光音楽シリーズ4枚を帯付きでコンプリートすることができました。この辺りの作品、学生時代は3桁でよく見かけたものですが、最近はずいぶん値上がりましたね。あの時に集めておけばよかった...
 モナド観光音楽シリーズのどの作品もお気に入りですが、一番よく聴くのはやはりこちら。数ある細野さんのアンビエント作品の中でも旋律的なフィールが少なくミニマルな印象を受けます。天河社で録音されたA面は現代音楽的な濁り気のない透明感あるサウンドでとても穏やか。水の音が入っているレコードは気持ちが落ち着いてよく朝起きたらかけています。本盤の1曲目「水と光」も、せせらぎとベルの音からなる静かなトラックでお気に入りです。東京録音のB面の頭2曲は、無秩序なバグ的自然さを思わせます。エンディングの「空へ」は、細野さんのアンビエント曲の中でも特に好きなトラック。



Christopher Hobbs / John Adams / Gavin Bryars ‎– Ensemble Pieces
Obscure ‎– obscure no. 2
1975

 Brian Enoが発足させた実験音楽レーベルobscureのカタログ・ナンバー2番。AMMにも参加していたChristopher Hobbs、ミニマル・ミュージックの名匠John Adams。そしてタイタニック号沈没時に混乱する人々のその心を少しでも和らげようと乗船していた弦楽カルテットが、その沈みゆく船の甲板で奏でた音楽を再現した「Sinking of the Titanic」で知られるGavin Bryarsの3名の楽曲を収録したオムニバス形式の1枚。Christopher Hobbsはガムラン風のミニマルな楽曲も耳を引くが、やはりGavin Bryars「1, 2, 1-2-3-4」がお気に入り。この曲は僕の大フェイヴァリット盤、Noahlewis' Mahlon Taitsが2001年にリリースしたEPに収録されている「Tenderly」の元ネタになっているという話を以前聴いてずっと探していた1枚(ある時はあるけど探すとなかなか見つからない、値段がピンキリすぎてなかなか買いずらい類の盤...)。一聴するとゆったりと幻想的な、なんの変哲も無いラウンジ音楽のようですが、この独特の幽霊的な捻れはこんな楽曲プロセスから。演奏者は同じ部屋で互いの演奏を聴きながら演奏するのではなく、各自のスタンダード・ナンバーを収録したカセットテープをヘッドフォン越しで聴きながらそれに合わせて演奏した。偶発的な調和と不調和がゆったり繰り返し波のように行き来するアンサンブルは不思議な夢見心地。チェロにCornelius Cardew、ヴォイスでBrian Eno、そしてギターはDerek Bailey。楽曲的な演奏をするBaileyはタッチの繊細さが際立つように感じてとても大好きです。



Jon Hassell ‎– Fascinoma
Water Lily Acoustics ‎– WLA-CS-70-CD
1999

 Ry CooderがプロデュースしたJon Hassellの99年作。CDオンリーの作品なので、ぜひヴァイナル・リイシューして欲しいところ。今年、特に熱心に聴いていたJon Hassell、Ry Cooder、Blake Mills、Sam Genndel、Duke Ellington、Miles Davis、Eden Ahbez、細野晴臣、ECMがこの作品で様々な角度から紐つくような感覚がリスナーとしてあり、とても興奮しました。
 本作ではトレードマークの電子変調したトランペットは影を潜め、一枚膜を覆った幽玄な深いリヴァーヴに包まれたトランペットが印象的です。どことなくMiles Davis『死刑台のエレベーター』や「So What」のあの印象深いイントロを彷彿させるようなトランペットの質感を覚えました。1曲目は早すぎた霊性音楽家Eden Ahbezの「Nature Boy」カヴァー(彼の『Eden's Island (The Music Of An Enchanted Isle)』も素晴らしい作品!)。Duke Ellington「Caravan」のカヴァーも秀逸。Ryのギター・リック自体はブルース的と言えるかもしれませんが、エキゾチックかつコンテンポラリーで静かな本作のアンサンブルに組み込まれると、やはりBlake Millsの姿を重ねずにはいられません。この8年後ECMからリリースされる大名盤「Last Night The Moon Came Dropping Its Clothes In The Street」もおすすめです!



Jakob Bro & Thomas Knak ‎– BRO/KNAK
 Loveland Records ‎– LLR016
2012

 マイ・フェイヴァリット・ギタリストJakob Broの名作もついに入手。Lee KonitzやPaul Motianなど、びっくりするようなレジェンドが彼の作品のサイドマンとして参加することが多いですが、本作ではフリューゲルにKenny Wheeler、ピアノPaul Bley、ギターBill Frisellが参加。静けさの中に浮かび上がる構築的なアンサンブルで、ECM以前のJakobの集大成的な作品と言えるのではないでしょうか。子供達の聖歌隊を用いた「Northern Blues Variation No. II」や、古いアルバムをめくるような暖かさに包まれるBillとの2本のギターとThomas Morganのベースが絡み合う「Roots」、「Mild」、Jakobの歌声が聴ける(美しい!)少しオリエンタルな「Izu」など、様々な編成のアンサンブルが収録されていますが、もちろん散漫な感じは微塵もなく、戯曲のような流動性が一本の川のようにアルバムを通して流れていきます。このアルバムは僕のバンドが解散した後すぐにCDで買って何度も聴いていました。Thomas Knakがリミックスした3枚目はIDM、エレクトロ(ニカ!)色が強くてちょっと僕はあんまし聴いていません...



Paul Motian Trio ‎– It Should've Happened A Long Time Ago
ECM Records ‎– ECM 1283
1985

 そんなレアな盤ではないですが、これもまた探すとなかなか見つからず...Roth Bart Baronの遠征で広島に行った際にたまたま見つけ捕獲。過去には霊性フォーク好きの間でも知られるベーシストHenri Texierのグループにも在籍しているサックス奏者Joe Lovano、ギターはBill Frisell、そしてドラムスに Paul Motianという変則的なトリオ編成。
 本作で注目すべき点はBill Frisellがシンセ・ギターを弾いています!John Abercrombieがよく使う音色(プリセット音?)で、アブストラクトなプレイを聴かせます。またBlake Millsの話にもなりますが、彼の『Mutable Set』や『Look』で、トレードマーク的に聴かせるシンセギターはJohn AbercrombieやTerje RypdalといったECMのシンセギター使いを連想して、この辺りの作品はよく聴き返したりしていました。本盤収録の「Introduction」なんかはかなり近しいフィーリングを感じます。この時期のBillやTerje Rypdalをはじめヴォリューム奏法をシンセパッドのように滲ませるプレイは僕もとても影響を受けました。


Duke Ellington / Charlie Mingus / Max Roach ‎– Money Jungle
Solid State Records ‎– SS 18022
1962

 オリジナルはUnited Artists Jazzからのリリースでジャケも異なります。John Coltraneとの連名作やピアノソロなど小編成のDuke Ellingtonの作品はどれも好きですが、中でもCharles Mingus、Max Roachも迎えた本作はお気に入り。Duke Ellingtonと言えばスウィングのイメージが強くてこれまであまり聴いてきませんでしたが、ある時Charles Mingus、Sun Ra、Ahamad Jamal、Moondogみたいなラインで(少し無理矢理なラインかもしれませんがニュアンス伝わりますように...)改めてDuke Ellington聴いた時に一気に聴こえ方が変わるような感覚を覚えました。ここに収録された「Fleurette Africain」は、今年めちゃくちゃはまって狂ったように聴き返していました。




Emahoy Tsegué-Mariam Guèbru ‎– Emahoy Tsegué-Mariam Guèbru
Mississippi Records ‎– MRP-099
2016

 エチオピア音楽を再発見するエチオピークス・シリーズで話題になったEmahoy Tsegué-Mariam Guèbruの楽曲をコンパイルしたMississippi編集盤。これは今年一番よく聴いたレコードだと思います。エチオ音楽らしいペンタトニックを中心としたオリエンタルな旋律に、Erik SatieやDebussyを思わせる水彩絵の具が水に滲むような淡い響きがとても美しいです。「Mothers Love」、「Homesickness」あたり本当に素晴らしいです。唯一無二。こんな音楽他に見つかりません!リプレスの噂もちょいちょい海外の掲示板で見ましたが、どうしても今欲しくてそこそこの値段で購入。リプレスされたらもう1枚欲しい!



Ambrose Campbell ‎– High Life Today
Columbia ‎– SX 6081
1966

 激レアというほどではないですが、長年ゆるーく探していた1枚をようやく入手。ナイジェリア出身でその後、英国に渡り40年代に英国で初めての黒人バンドWest African Rhythm Brothersを結成。Fela Kutiも"ナイジェリアにおけるモダン・ミュージックの父"と崇めるAmbrose Campbellのリーダー作。「Ashiko Rhythm」、「Yolanda」はHonest Jon's Recordsのハイライフ・コンピ・シリーズにも収録されていますね。プリミティヴさはもちろん感じさせますが、都会向けといいますか同時期のナイジェリア録音の作品に比べるとだいぶモダンで、僕みたいなタイプのリスナーとしてはポップでちょうどいい湯加減です。コンピ収録曲がやはり素晴らしいですが、パーカッション・オンリーの「Gbedu Drums」、呪術的な(カリプソ経由した明るいDon Cherryというか....)「Treat Me Gently」辺りも耳を引きます!



Stephan Micus ‎– Wings Over Water
Japo Records ‎– JAPO 60038
1982

 ほんの3、4年前までどこでもあったような気がしますが、最近めっきり見なくなったStephan Micus。これもニューエイジ・リヴァイヴァルの影響でしょうか。ECM、JAPOから多くの作品をリリース、世界中の伝統楽器を操り1人多重録音で作品を作り上げる元祖空想民族音楽家(?)Stephan Micus。本作でもエジプトの笛にインドの弓弾き弦楽器、ツィター、ガムラン、ギター、植木鉢など、様々な楽器を1人で操り、プリミティヴかつコンテンポラリーな国籍を持たない不思議な音楽を聴かせます。



Jacques Bekaert ‎– Summer Music 1970
Lovely Music, Ltd. ‎– VR 1071
1979

 Alvin LucierやRobert Ashleyの作品のリリースで知られるLovely Musicからのリリース。Jacques Bekaertはベルギーの音楽家で、タージ・マハル旅行団の面々がベルギー滞在した際にTransitionというユニットを結成しているようです。本作は1970年に森の奥にあるJohn Cage邸(確かウッドストックの住民?)を訪れた際に、それまで経験したことのないような静けさを感じ、その静寂に着想を得て制作された。「19 For Alvin And Mary Lucier」、「23 For David Tudor」といったように、Cageの家で出会った人々の名前が楽曲タイトルとなっている。川のせせらぎといった環境音に、ヴァイオリンやフルート、コントラバス、ヴォイスなどが混ざり合う。アルバム全編、弱音を中心とした静謐なムード。時折ユーモラス。音だけでも充分楽しめる実験音楽。



Blake Mills ‎– Some Where Else
Beware Doll Records ‎– A1 00101
2015

 今年は毎日のようにBlake Millsのことを考えていました。Blakeがインスタに一番搾りの缶を手にしているのを目にして以来、僕の第一ビールは黒ラベルから一番搾りに...。
 本作はSam Jonesの写真集(写真はあまり詳しくないですが、William EgglestonやWalker Evansの系譜的アメリカーナの景色)の付録として付いてくるBlake Mills作品の中でも難関アイテムとされる(?)1作でサブスクでも音を聴くことは出来ず、年のはじめにアメリカの本屋の通販で在庫を見つけ入手。
 アルバム全編インスト。Blakeの得意とするキューバン調のテーマから、Jim O'RourkeやGastr Del Sol『Upgrade & Afterlife』あたりのサウンドを思わせるアメリカーナなどを収録。ギターの出番が多く、彼のどの録音作品よりも、ストレートなギター・プレイを楽しめるのではないでしょうか。枚数も多くないので、見つけたら是非買っておきましょう!


それでは、良いお年を!

岡田



 

2019年12月16日月曜日

年間ベスト廃盤レコード2019(その1)

こんばんは。

みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今年も早いもので、残り数週間。

僕は今年もたくさんレコードが買えて楽しい一年でした...

そんなわけで、毎年恒例ですが、今年入手した中古レコードの中で、お馴染みの定番アイテムから、よく分からないものまで、心に残ったお気に入りの作品をただただ自慢する『年間ベスト廃盤レコード』を書いてみようと思います!

今年のレコード購買遍歴は、相変わらずクラシック・ロック、ニューエイジ、実験音楽、インディー・ポップ、コンテンポラリー・ジャズと、相変わらずちまちまいろいろ手を出しておりましたが、ニューエイジもシティ・ポップも流行りすぎて高くて買えず年明け早々に離脱。メインで掘っていたのはS.S.W.盤。体系的な統計をもって、ある時代に物差しを当てて計るようなことは本当に意味が無い。とはいえ社会的な大きな流れはいつ何時にも抗えない中で、時代時代に生まれた小さな声と言いましょうか、いつしか忘れられてしまいそうな個々人としての思いが、上手くても不器用でも多くのS.S.W.盤といわれるようなレコードには詰まっているようで、やはり今でもそういった音楽に魅せられているなあと実感する1年でした。
今回も(去年は1回でサボってしまいましたが...)何回かに分けて5枚ずつ区切って、気ままな順番でご紹介出来ればと思います。




Ron Cornelius ‎– Tin Luck
Polydor ‎– PD 501
1971

マイ・フェイヴァリットS.S.W.大名盤Leonard Cohen『Songs From A Room』や、Bob Dylan『New Morning』にギタリストとして参加。サイケ・バンドWest(2ndにはなんとGary Burton「General Mojo's Well Laid Plan」カヴァー収録!)のメンバーであるRon Corneliusの唯一作。Polydorリリースということで(Polydor盤のS.S.W.なかなかアガらない気持ち分かりますよね...)、僕はノーマークで最近まで全く知らなかったのですが、レコード屋で探していると伝えると「良いレコードだよね!たまに入るよ!」と皆さん仰るので昔からのレコード・ファンの間では有名な1枚の模様。もとバンド・メイトのベーシストJoe Davisとローカル・ジャズ・ドラマーPaul Distelそして自身のギター&ピアノのみのシンプル・アンサンブルと飾り気のないピュアな歌声に心掴まれる。特に冒頭の「I've Lost My Faith In Everything But You」が大名曲。ソロ作が聴けるのがこの1枚しか無いというのは本当に惜しい。




Ron Moore – Death Defying Leap
Airborn Records – AR 7775
1978

1st、2ndはアシッド・フォーク名盤としてお馴染みのC.C.M.系S.S.W.の78年作。深過ぎるヴィヴラート・ヴォイスが印象深過ぎる「Something Lasting」を以前YouTubeのオブスキュア・サイケ・アカウントで、チェックしていてずっと探していた1枚。Emitt Rhodesにも通じる高水準のポップ・ソングを、Neil Youngを思わせるヘナい歌声で聴きたい!という昔から追い求めていた僕の欲求を充たしてくれました...



Terry Reid ‎– Seed Of Memory
ABC Records ‎– ABCD-935
1976

 NumeroのSNSアカウント「この作品がサブスクで聴けないのは人類にとっての大きな損失!」みたいな触れ込みで紹介していたはず。僕はメロウ・スワンプのリサーチをしていた際にディガー・フレンズの柴崎さんに教えてもらいました。UKで最もスワンプしているTerry Reidの名盤。電話越しの甘くて切ない別れを歌うメロウ・チューン「Faith To Arise」は、その内容も相まってヨット・ロック好きにもお勧めしたい...!



Michael Bierylo Ensemble ‎– Cloud Chorus
Inner Light Records ‎– IL-1107
1987

ミシガン出身のギタリストMichael Bieryloによる自主盤コンテンポラリー・ジャズ/ニューエイジ名作。Frank Londonのグループにも参加し、エスニック系のリード楽器を得意とするMatt Darriauがソプラノ・サックス、無名のチェロ奏者Brian Capouch(楽曲の性質もあるがDavid Darlingを思わせる!)が客演。Ralph Townerスタイルのコンテンポラリーなアコースティック・ギターから、Steve Tibettsスタイルの空間系のエフェクトを多用した漂うエレクトリック・ギターなど、ジャケットの通りECMを意識した音作り。



Townes Van Zandt ‎– High, Low And In Between
Poppy ‎– PYS-5700
1972

Father John MistyやKevin Morbyのカヴァーで知りました。ほかにもEmmylou HarrisやWillie Nelsonなど多くのミュージシャンにカヴァーされていますが、彼自身のヒットは皆無。そんな、まさにミュージシャンズ・ミュージシャンなエピソードに惹かれます。『High, Low And In Between』とは、なんとも美しいタイトル...。このアルバムから必要最低限ではありますがバンド・サウンドが導入されます(意外な所で若かりし日のLarry Carltonが参加)。楽曲の素晴らしさはもちろんですが、日本語ネイティヴにはなんとも捉えどころない、しかし非常に気になる存在。やはり日本語テキストが少なく海外の掲示板などで情報を集めていたのですが、このアルバムを制作中、現場にピック・ケースを忘れたTownesの代わりに自宅へ向かった当時の恋人がヒッチハイクの道中に殺されてしまうといういたたまれない事件があったそう。次作収録の「Snow Don't Fall」は、彼女のために書かれた唯一の楽曲。"とても人前で歌う気になれない"ということでライブで演奏されることはなかった。Townes Van Zandtに関する詳しい日本語テキストって存在するのでしょうか。もしご存知の方いらしたら教えて下さい...。


 

2019年9月15日日曜日

190915

とても悲しいニュースです。癌で闘病中だったSteve Hiettがフランスのモンペリエで亡くなりました。

昨年、僕が作ったEPで彼の撮った写真をどうしても使いたく、そして叶うならば彼がかつてミュージシャンとしてリリースした唯一のレコード『Down On The Road By The Beach』から1曲カヴァーさせてくれないかというお願いのためメールのやり取りなどしていたので、まさか!という気持ちでいっぱいです。写真を使いたいと言う話はともかく楽曲をカヴァーしたいという話にビックリしながらも喜んでくれて、完成した音源を送ったらとても気に入ってくれている様子でした。今月末に『Down On The Road By The Beach』のアナログ・リイシューと、未発表音源のリリースを控えていて、聴いたらまた彼に連絡を取ってみようと思っていた矢先で、とても驚いています。

亡くなったのは19年8月28日。夏の暮れにひっそり息を引き取ったのはなんとも彼らしいというのでしょうか。
レコード『Down On The Road By The Beach』がリリースされた当時に一緒に出版された同名の写真集をぱらぱらめくりながらレコードを聴いているのですが、雲ひとつない深いブルーが目に沁みます。彼の写真は深い色彩が印象的ですが、彼の弾くギターの音色もまた、目をつむれば、真夏の照りつく浜辺から見上げた空のように深い青や、湿気のないサラサラの砂の色、プールサイドの水色、口紅やパラソル、海辺の街の、赤や黄やエメラルド色の景色が容易に浮かび上がってきます。音楽から景色が浮かび上がるなんてよくいう話しかも知れませんが、彼の音楽の発色は本当にスペシャルで、だれの音楽とも似ていない独創的な音楽でした。そして、そんなパキッとした発色とは対照的に、レコードを聴けば聴く程、地に足がついていないというのか、ずっと水中を漂っているような、浮遊する繊細な指さばき、ナイーヴなヴォーカルの響きにどんどん引き込まれていきました。『Down On The Road By The Beach』というレコードからは本当に多くの感覚を刺激され影響を受けました。深く明るい色を放つ彼の写真や音楽を眺め聴きながら、彼の写真や音楽と彼が死んでしまったという事が、あまりにもかけ離れた事のようで、どうにも気持ちの整理のつかないままこんな時間になってしまいました。本当に、本当に美しいレコードをありがとう。

2018年12月11日火曜日

年間ベスト廃盤レコード2018 (その1)

こんにちは。

みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今年も早いもので、残り数週間。

僕は今年もたくさんレコードが買えて楽しい一年でした...

そんなわけで、去年はすっかり忘れていたのですが、今年入手した中古レコードの中で、お馴染みの定番アイテムから、よく分からないものまで、心に残ったお気に入りの作品をただただ自慢する『年間ベスト廃盤レコード』を書いてみようと思います!

今年のレコード購買遍歴は、ニューエイジに始まり、バレアリック〜ヨットロック〜AORと一連の個人的なブームが夏まで続き、9月にリリースされたNoname『Room 25』を聴きとても感化され、高校生の時以来のソウル/レア・グルーヴ・ブームが押し寄せ年末まで駆け抜けた次第です。S.S.W.は相変わらず買ってます。何回かに分けて10枚ずつ区切って、気ままな順番でご紹介出来ればと思います。




Steve Hiett ‎– Down On The Road By The Beach
Label: CBS/Sony ‎– 28AP 2525
Country: JP
Released: 1983

今年出会ったレコードで特にお気に入りの1枚です。写真家Steve Hiettが、音楽家として残した唯一作。ニューエイジ、バレアリックとしての再評価著しいですが、ブルースやロックンロール由来と思われるギタープレイが独自の形で変形した彼のスタイルは、Loren ConnorsだったりTerje Rypdalといった唯一無二系特殊ギタリストの系譜としても聴きたいところです!奇跡の名盤!




Allan Thomas ‎– A Picture
Label: Sire ‎– SI 5901
Country: US
Released: 1971

ドゥーワップ・グループ出身のS.S.W.。フォーキー・ソウルというにはフォーク寄り、S.S.W.作というにはソウル寄り、こういったこれまで居場所の難しかった作品は、今日の感覚で聴けるものが多いように感じます。シンプルなバンド・アンサンブルも◎。アルバム通して粒揃いのメロウなグッド・ナンバーばかりで、何もないお休みの日の朝によく聴いていました。




Gary Bartz ‎– Music Is My Sanctuary
Label: Capitol Records ‎– ST-11647
Country: US
Released: 1977

時期ごとに音が変わるものの、どの作品も良質なアルト・サックス名手。プロデュースはSky Highチームで、モダン・ソウル寄りな音作り。1曲目の「Music Is My Sanctuary」がキラー・チューン。ちょっとフローティングするようなコード感、重ためのファンク・ビートと賑やかなパーカッションの行き来、そしてアンニュイ・ヴォーカルが堪りません...!




Gregg Suriano ‎– Peace Of The Rock
Label: Behold Records ‎– GS-000
Country: US
Released: 1978

今年はYouTubeディグで大量のローカル盤を聴きまくり、音とジャケを覚えて、レコ屋へ繰り出すというサイクルをしまくって、いろいろな作品に出会えました。先に書いたSteve Hiett、そして‎Gregg SurianoなるローカルS.S.W.のこの唯一作もYouTubeで情報を仕入れたもの。B面1曲目のヨット・ロック「I'd Rather Have Believed A Lie」がイチオシ・トラック!




Bobby Taylor And The Vancouvers ‎– Bobby Taylor And The Vancouvers
Label: Gordy ‎– 930
Country: US
Released: 1968

今年リリースされたNatalie Prassの新譜に収録された「Ship Go Down」にグッと来て、似た雰囲気のビター・スウィートなノーザン・ソウルを探していて辿り着いた1枚(ちょっと雰囲気違うかもしれませんが...)。この手のソウルにしてはマットなヴォーカル処理に程よい派手さなアンサンブルが◎。シングル・カットもされた「Does Your Mama Know About Me」、「Malinda」がお気に入り。全編良い曲揃ってます!




Full Sail ‎– Maiden Voyage
Label: Not On Label ‎– SW 2809
Country: US
Released: 1976

こちらもYouTubeディグでその存在を知った自主ヨット・ロック名作。ちょっと調べた限りでは当たり前のように唯一作。押しては返すさざ波SEでイン、軽やかなコンガがグルーヴする「Sailin' Along」がめちゃくちゃ名曲です!自分が入手した個体には、裏ジャケにJohn&Debbieなる友人夫婦(?)への直筆コメントがメンバー全員分書き込まれてるのですが、この手のコメントにしては長文でグッと来ました!




Wall Matthews ‎– The Dance In Your Eye
Label: Fretless ‎– FR 158
Country: US
Released: 1981

Folkwaysが生み出した伝説的実験土着サイケ・フォーク集団The Entourage Music & Theatre EnsembleのギタリストWall Matthewsのソロ作。全く盲点、知らなかった!The Entourage〜に比べると随分ジャズ・ロック、フュージョン色濃い危なっかしい冒頭曲に面食らいますが、2曲以降はアコースティック・ギターを使ったが続きますのでご安心あれ。「Whitebirds」、「The Village」、「The Dance In Your Eye」あたりはSteve Tibettsやインディー・クラシカル作品にも通じるコンテンポラリーなサウンド◎




Wolfgang Dauner ‎– Output
Records ‎– ECM 1006, ECM Records
Country: Germany
Released: 1970


電球男ジャケでお馴染みの名盤!Joki Freund、Jean-Luc Pontyなどの作品への参加でも知られるピアニストWolfgang Daunerが、ECMに残した電化フリー・ジャズ。アコースティックなジャズ・アンサンブルに、異物として投入されるシンセの音色がひたすら刺激的です!ラストの「Brazing The High Sky Full」は、強烈エクスペリメンタル・ファンクです!




Michael Gately ‎– Gately's Cafe
Label: Janus Records ‎– JLS 3039
Country: US
Released: 1972

ずっと探していた1枚!レコード・ハンティング・フレンドの谷口さんが誕生日にくれました...!初期Robert JohnやBlood, Sweat & Tearsらに曲提供をしていたMichael Gatelyの1st。甘みのある歌声にメロウかつウェルメイドなライティング・センスに脱帽。ソロ作は同年にリリースされた2ndを残し、その後もソングライターとしても特に目立った活動も無いまま83年に若くして亡くなってしまっています。A.O.R.時代にソロ作を残していたらまた違った評価があっとのではと思うと、なんだか悔しいですね。




Sly & The Family Stone ‎– There's A Riot Goin' On
Label: Epic ‎– KE 30986
Country: US
Released: 1971

今年の下半期一番ドハマりした1枚。トラップっぽいビートが飽和状態でどれを聴いても古くさいビートと感じていたところ、nonameやAri Lennoxの新譜あたりの生演奏とマシンイズムを組み合わせたファンク系のビートがすごく刺激で、そういったグルーヴやテクスチャー感覚の源流を探す過程で改めて聴き直しました。
自意識が強い質なので、欲しい欲しいと思いつつ今更レジへ持っていくのが恥ずかしく買えていない名盤が何枚かあり、そのうちの1枚でしたが、一昨日、オリジナルが安く見つかったので意を決してレジに向かいました...!


というわけでしつこくまだまだ続きます...

2018年3月18日日曜日

180318

音楽を聴ながら、ときおり時間の感覚が、昔、本当に経験した記憶と、本当にあったのかよく分からないけれど鮮明に浮かぶイメージが交差して、頭がクラクラしたり、誰にも言えない恥ずかしい記憶を掘り当ててしまった時のように、バツの悪い気持ちになって1人で部屋にいながら声を上げてしまいそうになる。
高校時代は国分寺〜府中のあたりをぶらついていた。いままで全く本なんて読まなかった自分が、村上春樹『ノルウェイの森』を片手に文学少年ぶって、これまでに全く日本語のロックを意識していなかった自分が、はっぴいえんどの3rdをiPodに詰めて通学路を行き来していた。『ノルウェイの森』に、時折描かれていたと記憶している60年代だか70年代だかの国分寺の風景は、そのアパートの隅々まで知っているような気がしたし、はっぴいえんどの3rdは、初めて聴いたはずなのに、メロディとギターの音色を聴けば(これは誰かの音楽に似ているというわけではなく)、なんだか昔っから知っている音楽のような気がしてきた。いまでもはっぴいえんどの3rdは、聴く度にその時に本当にあったかは分からないけれど感じていた景色、その時に考えていた事が鮮明に、あるいは淡い色の水彩画のように浮かび上がり、意識もなんだか足が届かないプールを漂っているような気持ちになる。両親がはっぴいえんどを聴いていたわけではないし、3rdの楽曲がテレビで流れる事もないだろうから、本当にそんな気がするというだけの話しなのだと思う。失われた東京への郷愁を描く『風街ろまん』は、もっと客観的に、純粋な音楽として聴けるのだけれど、『Happy End』は、自分の中でそういった意味では純粋な音楽として耳に入る事はないと感じる。

さて、僕はいま完全にスランプに陥っている模様。書いても書いても全く良い曲が書けない。年齢や生活の焦りで、無心で音楽に向かうのが正直厳しくも感じる。ポップスを作るのは次が最後かなとも思っている。正直もう辛いけど、なぜまだ音楽を作りたいのだろうかといえば、きっと『Happy End』を聴いた10代の感覚が忘れられないのだと思う。なんて思っていた事を10年後にでも思い出してあまりの恥ずかしさに思わず声を上げていられますように。

2018年2月9日金曜日

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今朝、夢を見た。解散したバンドのメンバーで演奏をしている夢だった。

竹川に、3年ぶりくらいのメールを入れ、久しぶりに会う事にした。場所は、3年前に、もうバンドをやりたくないという話しをメンバーにした吉祥寺の居酒屋で。彼と会話したのはその日が最後だった。

結果から言うと、吉祥寺の道端の排水溝に2度エーテル。電車に乗ったものの、たまらず途中で下車。トイレに急ぐものの、我慢出来ずに目前でエーテル(本当にごめんなさい...)、その後30分トイレに篭城する羽目になる。ほんの数杯のアルコールを呑んだだけで、ここまで悪酔いするのはいつぶりか。たかが、学生時代のほんの2、3年の間にやっていた小さなバンドだったが、今でも重くのしかかっていたのだと思う。とても重たかった。

久しぶりに呼びつけたは良いものの、どんなツラを下げて会えば良いものかと悩み、待ち合わせをわざと遅刻して入店。相変わらずあっけらかんとしたやつなので、入ってしまえばその後は、自然に話せた。

月額ストリーミングも未だに使わず、好きな音源はCDやLPで買う。メディア類は全くチェックしてないから、このしばらく会わなかった期間にFrank OceanもBon Iverも全くチェックしていなかったそう。これは一切の皮肉なしで言うが、この数年に、Frank OceanもBon Iverも知らずに済んだなんて、なんて羨ましいことか!Frank Oceanは、君の好きなBurt Bacharachのカヴァーもやっているよ。と、伝えた。いや、ここまで来たら、聴かないでくれとも。

初めて会った時は、アシッド・ジャズも下火になった頃だったけれど、JamiroquaiとIncognitoがお互い好きで意気投合してバンドを始めて、はっぴいえんどとか言わずにあのままやっておけば売れたかもね。

彼からは、最近、来日したSean O'Haganを観に行って、またHigh Llamasがお気に入りという話しをしていた。それに、ブラジルのコード感の話しだったり。
そういった話しに"なんで?なんで?"と、都度都度、突っ込みを入れるが、相変わらず口ごもる。"ブラジルのコード感は曲線的なメロディを描きやすくて、日本語の点っぽさを解消出来るのは確かだよね"とフォローすると、心のそこから"確かに!そうだね"と子供のように返事を返してくれる。

彼のような人種は、周りに他にいない。自分で選んだ音楽を聴くという極めてシンプルで、ピュアな音楽の接し方をしている。見た目はオッサンだが、なんと表現すればいいのか、、そう何にも染まっていない。無染。ここ数年の音楽の波、いや世の中の流れに呑まれて、なんだか嫌気がさしていた自分は、とても羨ましく思え、それはバンドを一緒にやっていた頃から、何一つ変わっていない事のように思えた。

近くに、こんなにも狂ったように音楽が好きなやつがいたから、解散した後に、果たして自分が音楽が本当に好きなのかどうか、悩んだ時期もあったという話しも初めて聞いた。逆に僕は彼のソングライティング・センスにとても嫉妬していた。少しでも良い曲を書けるよう、自分が出来る事は、誰よりも音楽を聴く事しか出来なかっただけだ。初めて増村のペンが自動筆記のように走ったのは、僕の曲ではなく、竹川の曲だった。桑田圭祐のラジオで掛かったのも僕の曲ではなくて、竹川の曲だった。ふと思い出して、そんな話しをすると、ラジオでは、おれの曲なのに、"このリーダーの子はバンジョーにペダルスティールも弾くのか。Brian Wilsonみたいなやつだな"とだけ言っていたのを今でもはっきりと覚えているという。

こうやって、まともに会話するのも、バンドの終盤1年はほとんどろくに会話もしなかったから、本当に久しぶりだった。

2枚目以降、ぜんぜん付いていけなくなった、という話しをしていた。そりゃそうだよね。僕も、なにに取り憑かれていたのかよく分からない。とにかく見えないもの、言葉に出来ない事を音楽にしたかった。大した理由なんて無かっただろうけど、はじめて世の中に自分の音楽が出た時に、いとも簡単に決まりきった仕事をかた付けるように、自分の音楽が語られていく事が初めての体験で、それがどうしても我慢ならなかったのだと思う。あの頃は、若かったし、手当たり次第、全てのものに腹を立てていた。なんて振り返るような歳に今はなってしまったのか。

自分にとって音楽を作る事は、スタンスは変わった部分もあるけれど、基本的に変わらないのは誰かのためでは無いし、自分のためでもない。かっこよく上辺の言葉を使うと、音楽のために音楽を作りたい。本当にそうなのかはよく分からない。

時々、音楽が好き過ぎて、音楽を知らなければ良かったと思う事がある。そうすれば今頃、子供を連れてジャスコに行くような生活が出来たのではと。20代の前半は、本当に音楽によっていろんな物事をトチ狂わせた。きっと音楽に救われるような人は、程々の距離で音楽に接する事が出来るのだろう。ただどうしても、僕にはそれが出来なかった。深みにハマればハマる程、いろんな事が上手く出来なくなってしまった。そして、バンドもうまく回す事が出来なくなって放り投げてしまった。

こんなやりとりもした。どういう事を考えているのか知りたい一心で、子供のようにとにかく質問を浴びせた。

「きっと自分は実験的なものよりポップスが好きなんだ。」

「じゃあペットサウンズは?」

「ポップス」

「きみがよく着てたTシャツの狂気は?」

「ポップスじゃない」

「じゃあ自分の思うポップスの定義は?」

「うーん、、口ずさめるような良いメロディの音楽かなあ」

「じゃあ狂気の1曲目すごい良いメロディじゃない?」

「そういわれるとポップスだね」

「ソフトマシーン」

「ポップスじゃない」

「初期のソフトマシーン、いやロバートワイアットは?」

「ポップス」

「ジャコがいた頃のウェザーリポートは?」

「ポップス」

「ドナリー」

「ポップス」

「ソーファット」

「ポップスじゃない。でもあのベースリフ、、ポップスだね」

「オーネット」

「ポップスじゃない」

「ドンチェリー」

「ポップス」

「そうだよね。じゃあ君の好きなミュージックフォーエアポーツ」

「そう言われるとメロディ無いけどポップス」


あの頃、もっといろんな話しをするべきだったのだろうか。というと、なんだか昔の恋人に当てた手紙のようだ。それは、永遠に元の通りには戻らない。

はじめはいろんな偶然が、ピースをはめるように、連鎖しておもしろいようにうまく収まった。それは、ほとんどミラクルの連続で。
しかし、ある時、手にしていたピースは、然るべきものではなかった。すぐに次のピースを試すなりカチリとはまるもの探すべきだったのかもしれないが、執拗に回転させたり、裏返してみたり、どうしてもその1つのピースを手から離す事が出来なくなってしまっていた。今思い返してみてもそれは間違いだったとは思っていない。ただ、そうしているうちに時間が切れてしまっただけのことだ。


ほんの小さなインディーのバンドなのに、なんだかたいそうな物言いをしてしまったけれど、とても大事な時間を過ごせた事に感謝したい。


帰り際に"また会えるとは思っていなかったよ"と言われ、知らずに背負っていたものがほどけて、道端の排水溝に吸い込まれていった。

2018年2月6日火曜日

180206

 しばらく間が空いてしまったけれど、久しぶりにブログを書いてみようと思う。ブログってアーカイヴがしやすいから、ふと思い出した時に読み返してみて、過去の自分の意識を思い起こしたり出来るから面白い。
 特に外向けの文章と気張らず、思った事を自動筆記的に書いてみるのも、あとあと自分で読み返して面白いと思うので、誤字脱字を気にせずとりあえず進めてみる。

 これまでの人生で日記を付けて時期が3度あった。一番はじめが小学校の5、6年の頃。5年生の新学期にクラスで日記帳が配られた。市かなにかから鉛筆でも配るように配布でもされたのだったのだと記憶している。そこから週に数回書くときもあれば、すっかり日記の存在を忘れて一度しか書かない月があったり。特にみんなで日記を付けて先生とやり取りしましょう!という事ではなかったけれど、はじめの方はクラスみんなが書いて先生に提出していたが、それも半年後にはみんな飽きてしまって、コンスタントに書き続けていたのは、自分くらいだったのでは、と思う。
 家族と出かけたことや、友達を落とし穴にはめたこと(片足が膝まで入るくらいの穴で、蓋の下にはビニールを敷いて水をたっぷり入れたのをよく覚えている。)、仲の良い友達と喧嘩してしまったこと、ちょうどギターを買ったのが5年生の頃だったから、そのことも書いたりした。ビートルズが大好きで、そんな話しを書いた日記を先生が多摩の子詩集かなんかに送ってくれた掲載された事もあった。
 これはよく言う事だけれど、思い返せば、なんで子供の頃は、あんなにも毎日が新鮮だったのだろうか。"また同じような一日が始まるのか"と朝起きて呟き、ルーティンと化した日常のループにウンザリしながら小学校に通う子供なんていないはずだ。"あ、また同じような一日だ"なんて考えるようになってしまうのは、いつからなのだろう。ともあれ、特に大きな出来事が無くともネタに困る事は無く、日々のちょっとした面白かった話しや考えていた事を書いては、提出していた。飽きずに続いたのは、提出する度に先生がコメントを書いてくれて、それを読み返すのが好きだったのだと思う。その日記帳は、小学校を卒業した後、書き進める事は無かったけれど、大掃除の旅に"こんなのあったなあ"と思いなが読み返す。それがはじめの日記を付けていた時期。

 そのあとは、大学に入って、森は生きているというバンドを始めた時に、ホームページのコンテンツとしてレコードのブログを書いていた時期がある。当時のP-Vineのディレクターだった柴崎さんは、バンドの音源を聴いた後、このブログを読んでくれて連絡をくれたのを覚えている。この話しは、どっかで書いてる気がするので、こんなところで。

 その後は、バンドが解散する直後から、初めてのソロの制作中までの事をノートに書いていた時期があった。重たいバンドから解放されて自由になって、はじめのうちは身軽になった喜びと、明日への希望(!)でいっぱいだったけれど、徐々に1人になった所でのなかなか上手く進まない焦りで後半は思い出したくないくらいダウナーな急下降を記録した日記が存在するが、これは、読み返してもあまり笑えないやつと判断して、アルバムが完成したと同時に燃やした。


 今日は、今やっている映画仕事の打ち合わせに出かけて、ついでに気分転換に髪を切りました。切ってくれたお姉さんのハサミ捌きに一切の迷いがなく、サクッサクッと切り落としていく様が、なんともかっこ良かったです爽快でした。帰りにレコード屋に寄って、Ben Sidran『On The Cool Side』と、Steven Halpern & Dallas Smith『Threshold』を買いました。最近は、A.O.R.とニューエイジがお気に入り。

2017年5月14日日曜日

Linda Rich ‎– There's More To Living Than I Know So Far


Linda Rich ‎– There's More To Living Than I Know So Far

Inter-Varsity Records ‎– LPS-03498
1969


レア・グルーヴ再発でお馴染みのNumeroが、フォーク/アメリカーナ系の作品を取り上げる『Wayfaring Strangers』シリーズ。その第一弾である女性フォーク・シンガーに焦点を当てた『Ladies From The Canyon』が、今年に入ってアナログ化されました。おお、ようやく...!

コンピ・タイトルはもちろんトラディッショナルとオルタナティブの架け橋的存在。その後のフォーク・シーン象徴する傑作Joni Mitchell『Ladies From The Canyon』からの引用。マウンテン・フォークをベースに、ジャズやロックをはじめとしたコンテンポラリー・ミュージックとも接近したその革新的なサウンドは、オーヴァーグラウンドでも大きな衝撃をあたえ、その後の影響は計り知れませんが、第二のルネッサンスは、街角のカフェや教会でも起きていました云々...という趣旨の企画。

このコンピがリリースされた06年頃と言えば、Linda PerhacsやVashti Bunyanなんかが立て続けに再発掘され、フリー・フォーク/フリーク・フォーク全盛のUSインディーとも相性良く(Vashti Bunyan+Animal CollectiveなんてEPも出ましたね!)、アシッド・フォーク的なものがとっても盛り上がって印象です。コンピ『Ladies From The Canyon』はその中でも、よりローカルな自主盤規模の今聴ききたいサウンドをコンパイルした決定打だったはずです。



アナログ盤はまだ買えていませんが...

そんなコンピ中で、特に気になったのは、Karen Dalton系のスモーキーな歌声に、サンプリングもしたくなるナイス・グルーヴが印象的なShira Small「Eternal Life」(オリジナルは、ゆうに1000ドルは越えるようですが、いつか絶対LPで欲しいです。プレゼント・リストに)と、チェロとフルートによるKronos Quartet的スリリングさを持ったアンサンブルが印象深いLinda Rich「Sunlight, Shadow」でした。



カンザス出身のLinda Richは、クリスチャン系のレーベルInter-Varsityから3枚のアルバムがリリースされており、『There's More To Living Than I Know So Far』が1stアルバムです。ちなみにInter-Varsityは、モダン・フォーク+ソフト・サイケ・デュオJonathan & Charlesが運営していたようです(こちらは期待しないで聴くとまずまず悪くないアルバムです)。


A1〜A4までの自主盤とは思えぬ緊張感ある流れに改めて驚きです。中でもNumeroのコンピでも取り上げられた「Sunlight, Shadow」の幾何学な和声感と、お金がなかったが故に、ベースに見立てたチェロのピチカートとフルートからなるイントロは、まるで良質な室内楽を聴いているようで、10年代の耳で聴いても新鮮に思えます。この曲に関しては歌詞も宗教っぽさは捉え方によってですが、説法臭い印象は余り感じなかったのでC.C.M.苦手な人も聴けるのではないでしょうか。そしてB面も佳曲が揃ってます。個人的にお気に入りなのは、メロウなヴォーカル・ハーモニーと、サビでのコードの仕掛けに胸キュン必至のB1「Man Of Galilee」。
アパラチアン・フォーク〜UKトラッド、下地の幅広さはもちろんですが、やはり、所々で聴かせるイレギュラーなコード感と、センスの良いチェロやフルート、クラリネット使いが(そもそも楽器のチョイスが素晴らしい。アレンジャー/プロデューサー・クレジットは残念ながら見当たらず)、このアルバムを特別なものにしているのかと思います。捨て曲なしです。

さて、そんなLindaさんですが、00年代に発掘された多くのフォーク・シンガーと同じように、音楽サイトの掲示板を中心に捜索がされたみたいですが、いっこうに足取りが掴めなかった模様です。とあるサイトでLindaの弟を名乗る人物からの書き込みがあり、彼曰く"彼女とはもうかれこれ30年以上音信不通で、私たち家族も心配している。何十年も昔にリリースされた姉の音楽に興味を持ってくれている人がこんなにもたくさんいるのに、驚き、感激している。リリースした作品のマスターテープは私が持っているので、もし可能であれば無料で聴けるようにしたい考えている"といった趣旨の書き込みがありました。これが05年くらいの話と記憶していますが、その後、彼女が発見された、音源が解放された、という情報は入ってきません。



A1 There's More
A2 Sunlight, Shadow
A3 Things
A4 Clouds Above
A5 One Day
A6 Tomorrow's Mountain
B1 Man Of Galilee
B2 Song Without Words
B3 The Shadows Sing
B4 Walking With Jesus
B5 The Edges Of His Ways
B6 Come Unto Me


2017年5月10日水曜日

Stephen Whynott ‎– From Philly To Tablas


Stephen Whynott ‎– From Philly To Tablas

Music Is Medicine ‎– MIM 9001
1977


"As most things held so close it can not be recounted to anyone anytime. I know these songs hold the moment that for will never die."

裏表紙に、こんな言葉が記載されていました。言いたい事はフィーリングで分かるような気がするのですが、詩的なニュアンスみたいなのをどう汲むか上手く説明出来る英語が堪能な方いらしたら、コメント欄ででもご教示いただけると嬉しいです...


音楽という時間の経過を記録、そのまま時間場所を問わず再現出来るようになってからもう1世紀くらい経つのでしょうか。6,70年代には録音機材も庶民の手に届かなくもない所まできて、大きなレコード会社からのリリースではない作品も星の数ほど生まれています。
ビッグになりたい!そんな野心を抱えた作品、とにかくBob Dylanになりたかった、友達に配りたい、などなど、いろんな動機で作られた作品がありますが、どれもピュアな表現の音楽ばかりで、そんなレコードを好んで良く手にします。ローカルな6、70年代のフォークに相変わらず焦がれているのは、つまらない欲求や邪念、言ってしまえば大きくなり過ぎたビジネスとは作品自体が無縁に思えるからでしょうか。

そんな作品の中には、もちろん当時話題になってメジャー・レーベルとの契約に漕ぎ着けたもの、はたまた当時売れなくとも後の世代の感覚とマッチしてある時代からはクラシックとして語り継がれるような作品もあります。数十枚プレスしたけれど全く売れず、その苛立からほとんどをフリスビーにした後、叩き割ってしまった自主盤サイケの話もどこかで聞きましたが、その何枚かは市場に回ってたおかげで、後の世代がたまたま引き当てて"これはすごい!"という事になり、リイシューされたのだから、これはなかなかロマンティックな良い話です。

そんな時、誰かに創造れた音楽が、とりわけ記録されたレコードが死ぬ瞬間の事を考えたりもします。声の小さい、ナイーヴで、ピュアな愛すべき音楽たちの事が気がかりでしょうがありません。


音楽家が"このレコードは永遠に生き続ける事を確信している"なんて、レコードに記すのはとても美しいな、という事を言いたいだけです。実際、17年5月10日に、僕がターンテーブルの上に乗せました。



Stephen Whynottがいったい何者か、調べてもよく分かりませんでしたが、本作含め恐らく4枚のアルバムを制作しており、これが彼にとっての処女作のようです。

77年といえば、S.S.W.の時代はとうに終わり、ウエスト・コースト・ロックも瀕死、かつてメインストリームを賑わせた一発屋じゃない人たちの多くはA.O.R.かディスコに舵を切り、ロンドンではパンク全盛といった時代でしょうか。

Neil Youngの1stアルバムを思わせる、ウェルメイドなサイケデリック・フォークを基調に、ジャズ的な内省さを感じさせるリズム・セクション、オーボエやを用いたチェンバーなアンサンブル、そして霊性漂う研ぎすまされた音響感が織りなす、正に今聴きたいサイケデリック・フォークの名作といって差し支えない内容でしょう。時折聴かせる、ECMジャズとも、スピリチュアル・ジャズとも、アンビエントとも言える空間的な仕掛けに目を見張ります。録音はボストン。フィリーじゃないんかい。

このジャズ的なフィーリングに一役買っている、パーカッション・クレジットのRobert Pozarの存在は大きいように思えます。良くも悪くもクロスオーヴァー界のドンといったイメージのBob Jamesの初期のキャリアは、Mercuryからモーダルなジャズを出したり、ESPからエレクトリック・アコースティックなフリー・ジャズ出したりと、かなり実験的でハイセンスな作品が目立ちますが、そのころのBobのバンドでドラムを叩いていたのが、このRobert Pozarのようです。A4、A5の間ではつかの間の夢のように、突如バラフォンのトライヴァルなミニマル・パターンが現れます。Pearls Before Swineなんかもイメージすると分かりやすいですが、アコースティック・ギターをつま弾くイントロの上に、遠くからメディテーショナルな鈴の音が鳴る音楽はその後なにが始まろうとも受け入れたいと個人的思います。

ピアノはもちろん、オルガン、メロトロンも操るDan Fryeなる人物も良い仕事をしています。いわゆるS.S.W.の伴奏にくらべると、かなり抑制されたプレイで、絶妙なバランス感覚の持ち主のように感じます。彼がNeil Youngの初期作品におけるJack Nitzsche的な役割を果たしているのでしょう。オーボエでクレジットされているMichael Kamenは、あのMichael Kamenでしょうか。これまた興味深いです。

プロデュースはStephen Whynott本人と、ベーシスト/レコーディング・エンジニアとしてクレジットされているZed Mclarnonによるもの。ほほう、音響はミュージシャンによるものといわれると確か、楽器やアレンジの兼ね合いを把握しながら的確になされているように感じます。
ちなみに同レーベルからリリースされる次作は、Calico With Stephen Whynott名義となっておりZed Mclarnonはベースだけでなく、チェロやヴォーカルも披露している模様です。これは、気にして見ていますが見かけた事すらなく、いつか欲しい1枚です。

メロディー・メイカーとしては、Tim Buckleyのヒプノティックな雰囲気はそのままに、もっとメロウにしたような、Tony Kosinecにも近い万人受けしてもおかしくないような印象です。純粋にどの曲も素晴らしいです!


A1 Retreat Suite
A2 What Have You Seen
A3 Altitude
A4 Rain Swollen Highway
A5 Nine Day Sunflower
A6 Without Us
B1 Go Around
B2 Snows Edge
B3 Mexican Oil
B4 Oh Boy I've Won The Contest At Last



2017年4月6日木曜日

Saint Jacques ‎– Saint Jacques


Saint Jacques ‎– Saint Jacques

GRT ‎– GRT 30005
1971

"木漏れ日フォーク"なんてあってないような音楽ジャンルの呼称があります。"ぽかぽかとした晴れ空のもと、こんな日には部屋でグータラしてるのももったいない、ちょいと近所の草っぱらにでも出かけ、木陰で寝転び見つめた枝葉の間から、ゆらりと差し込む光にまどろめば、なんだかとっても穏やかな気持ちになってくるような、あの瞬間に、小鳥のさえずりと共に聴こえてきそうな音楽"という、なんともくどい言い回しですが、そうとしか言い得ないような音楽があります。例えばHeronの2枚のアルバム(オリジナルはジャンクのワゴンRくらいしますが、ありがたい世の中で今はapple musicで聴く事が出来ます!)なんて正にそんな呼び方がしっくりくる作品で、先日まさかの来日を果たした彼らがインタビューで"日本ではそんな風に呼ばれているんだね!なんかその呼び方しっくりくるよ!"なんて話をしてたのは印象的でした。
同じような音楽ジャンルでサンシャイン・ポップは初期のThe Byrds(オキャンなガールポップなんかもさんな風に呼びたくなってしまう事もありますが...)、木漏れ日フォークはCSN&Y「Our House」派生と個人的に捉えています。この辺はまあどっちでもよいのでしょう。


本盤はとある機会があって一度聴いた事があってずっと探していたCSNフォロワーの唯一作で、こちらも"木漏れ日系フォーク"という言葉がしっくりときます。
全曲オリジナル。作曲クレジットにDavid Kaufmann 、Peter Derge 、Rolfe Wyerとありますので、ジャケに映るいかにもフラワームーブメントの残党といったルックスのムサい3人の男は、それぞれいずれの3つの名前に当てはまるのでしょう。ゼベダイの子のヤコブに由来する(?)グループ名から察するに、こちらもC.C.M.系のグループなのでしょうか。さらっと聴いた歌詞の感じとかはあまり説法臭くなく、もっとパーソナルなものに思われました。
メンバー全員曲を書きますが、おそらくギターやピアノにフルート、ヴァイオリンも操るPeter Dergeなる人物がこのグループのブレインだったようです。 ちなみに3人とも、その後ミュージシャンとしての録音キャリアは無に等しい模様です。


さてさて、この手のマイナー盤を足を使って見つけ出すのはなかなか骨の折れる作業なのですが、たまたま安く見つかったので即購入。そしてなんと未開封シールドの状態でした。コレクターの人には怒られそうですが、迷わず親指の爪でががっと開封。ジャケットをパタパタさせると1971年から缶詰されていた空気が、なんとも甘い香りを放ちながら漂ってくるようです。

1曲目こそ売れる気満々のブラス入りファンキー・チューンですが(それでも全然聴けるナイス曲)、続くA-2「Susan」は、アコースティック・ピアノ&ギターの優しげな伴奏に、エコーのたっぷり掛かったフルート、そして甘いハーモニーが織りなす、正に"木漏れ日チューン"。Americaを彷彿とさせるメロウ・フォークA-5「Sword Of My Sorrow」、A-6「The Young Girl (Kathy's Song)」、Curt Boettcherワークスを思わせるソフトロックよりのB-1「She's Beautiful」、B-4「But It's True」、ほのかに香るアシッドなムードは、なんとなく今の耳にあってるようにも思いました。A-4「A Castle Of Sand」は、なかなか入り組んだ構成のブラス・ロックで、Blood Sweat & Tears + CSNといった趣。ラストB-5「Say What You Believe」は、メロディー感、アレンジ、折り重なるコーラス、もう完全にCSN直系ですね。良い曲です!

Cheryl Crutsinger(他の仕事は見つかりませんでした)なる人物のライナーが見開きに納められていました。はじめて彼らのハーモニーを聴いた時に、空いた口が塞がらなかった事。この作品は、この新しいグループが誇りに思うことができる傑作です。 すべての人がこのアルバムを楽しんでくれると信じているということ。
Cheryl Crutsingerが、彼らを近くで応援していた人物なのか、ちょっと雇われた筆のぱっとしない音楽ライターなのか分かりませんが、この手の当たり前に売れる事のなかったローカル盤のライナーって、いろいろ複雑な気持ちになります。とりあえず、みんな元気にしているのでしょうか。


A1 Rubies 4:01
A2 Susan 2:50
A3 Recollections Of A Lost Childhood 3:00
A4 A Castle Of Sand 2:31
A5 Sword Of My Sorrow 2:55
A6 The Young Girl (Kathy's Song) 3:16
B1 She's Beautiful 2:25
B2 The Saga Of Trail Blazin' Dave 2:46
B3 Peter's Song 2:26
B4 But It's True 4:07
B5 4:04

2016年12月9日金曜日

The New Troubadours ‎– Winds Of Birth


The New Troubadours ‎– Winds Of Birth

The Lorian Association
1974

さて、昨日とは打って変わって、早速よくわからないオブスキュアな宗教系アシッド・フォークを1枚。

普通に音楽を聴く分には本当にだれも興味のないことなのだと思いますが、キリスト教系の宗教団体によるクリスチャン・コンテンポラリー・ミュージックなんてレコードが無数に存在します。構成員の方々の間で楽しむのか、はたまたプロモーションなのかよく分かりませんが、、C.C.M.は、A.O.R.的なサウンドのものを一括りにさす場合が多いですが、宗教レコードはその他にも、ソフトロック的なのからモダンポップ、フォークやら、内容もモロにジーザスなのから、キリスト教以外の説法系、ニューエイジ思想のメディテーショナルなものまで種々様々。日本ではあまり馴染みの無い文化なように思いますし、あちらのお国でいまSoundcloudやBandcampなんてので、そんな音楽がリリースされているかは分かりませんが、とりあえずレコード時代にはそんなものが、数えきれない程リリースされております。その中には大手レーベルからリリースされるメジャー盤に全く引けを取らない好内容のものも少なくなく、特に個人的に好きで集めてるのがフォーク/S.S.W.モノで、Linda Perhacsみたいなのが結構あって面白いです!


現在も活動を続けるロリアン・アソシエーションなる宗教団体の方々によって作られた作品。その理念はというと"人々の霊的な衝動によって、喜びのある生活の新しい可能性を開き、個人的および社会的な変容の機会をもたらし、新しい時代の人間社会を生み出すことを云々..."ということで、ニューエイジ系のそれということでしょうか。『Winds Of Birth』というタイトルから、そんな香りがします。




オブスキュア・フォーク・ファンのハートをど真ん中直球で射抜く、モノクロの簡素なジャケットから素敵です。以前、某ユニオンにて青いジャケのヴァージョンを見かけましたが、調べた所、どうやらこの2種類が世に出回っている模様です。


メンバーの所在はまったくもって分かりませんが、恐らく全員アマチュアのミュージシャンたちによるものと思われます。アコースティック・ギターやピアノ、フルートといったアシッド・フォーク定番の編成を中心に、ドラム、トロンボーンやシンセサイザーなんかも加わり、メロウ・アシッドなサウンドに、フワリと浮き上がるようなリヴァービーなサウンド。男女ヴォーカルが曲毎に入れ替わり立ち替わり、時折、混声といった塩梅ですが、やはり澄んだ歌声の女性ヴォーカル曲が抜きん出ています。ローカルなソフト・ロックとアシッド・フォーク盤で全曲良いなんてものは殆ど無いとも思えるので、これは当たり盤といって間違いないでしょう。


押し曲としては流麗なガットギターのアルペジオに導かれ、フワフワしたフルートが漂い、Linda Perhacs系の澄んだ歌声が最大限に生かされた「The River」でしょうか。サビで重なり合うハーモニーがたまりません。メディテーショナル。リヴァーヴをたっぷり含んだウェットな音響もマッチしてます。同系統の「Symbius」、マリンバ入りの「Let New Worlds Grow」といった楽曲も秀逸です。12弦ギターを用いたサンシャイン・ポップ調の「Winds Of Birth」は渋めのテナー・ヴォイスと、浮遊感ある女性コーラスとのハーモニーが良いです。案外メジャー作品ではありそうで見かけない音の感じです。

なんだか近頃のあくせくした日々に、ふと目を閉じて耳を澄ますことも少なくなったなあと思う。音楽も映画も、生活もなんでも、目を閉じてぼんやりしている間に新しい情報が入り込んでいて、追いかけなくても良いのですが、そういった状態に置かれているというだけでなんだかいっぱいいっぱい。

さてさて話を戻して、当たり前ですが、超ローカルな作品ばかりのC.C.M.作品。版権もややこしそうでApple Musicなんかで聴けるのは皆無に等しいですが、日本人は歌詞をあんまし気にしないが故(?)、ここいらでは割と出玉が多いように思うので、見つけたら是非、、



A1 Winds Of Birth

A2 Let New Worlds Grow
A3 The River
A4 Gifts Of Love
B1 Earthseed
B2 Happy Song
B3 Symbius
B4 Canticle
B5 Song Of The Avatar

2016年12月8日木曜日

Luke Gibson ‎– Another Perfect Day


 Luke Gibson ‎– Another Perfect Day

True North Records ‎– TN 6
1971

大学生入学と同時にレコード・プレイヤーを手に入れてからは、午後の授業の前にレコード屋に足を運び、大きめのカバンに何枚かのレコードを携え、机に突っ伏しよくノートを
よだれで浸していた。それまでに買い貯めていた定番アルバムをレコードで買い直すのが常で、痛んだ盤がパチパチと音を立てれば立てる程に満足をした。3年からキャンパスが都内に変わり、都内のユニオン主要店舗の殆どが定期券内になり、それからはろくに授業も出ず、日が暮れるまであちこち餌箱漁りに明け暮れていた。

その頃、ちょうど熱を入れていたのがギター・マガジンで育った自分にとって全くの未開の地であった、Bob DylanやNeil Youngになれなかった星の数程いるアメリカとカナダのS.S.W.作品を集めることだった。当時はレココレやディスク・ガイド本も読んでいなかったので、ろくに知識もなかったが、試聴はせずにジャケットとクレジットに映る楽器編成なんかでこれだという物を吟味して買うのが常であった。The Floating House BandやJay Bolotin、Georgie Rizzoあたりの盤も、もちろん知っている人は当たり前に知っている名盤だけれど、そうやったたまたま出会うことになった。
以前ネットで読んだオブスキュア・フォークを気が狂ったかのように取り上げているブログの一文で"どうしても1人だけ顔も名前も思い出せない学生時代のクラスメイトのような..."というような締めの文章をふと思い出すが、きっとそうした音楽に熱を上げていたのは多分そんな所に、魅力という言葉はあまりしっくり来ないけれど、なんとなく儚さみたいなものは感じていたのだと思う。

ちょうどそんな頃に森は生きているというバンドを始めた。そして始めたばかりのバンドのコンテンツとして、専門的な知識はないけれどそういった音楽を何の気なしにブログで書き溜めていた。それをたまたま当時P-VINEにいたS崎氏が目にして(たしかHill,Barbata,Ethridgeの『L.A.Getaway』を紹介した写真の横にGellarsの『ガテマラ』が入り込んでいたやつ)バンドに声を掛けてくれたのだったと記憶している。


ざっと思い出話...特に何が言いたいとかいうわけでもなく、また自分の好きな音楽を集めてその時に思ったことを書き溜めておくと、あとあと読み返した時にちょっと笑えそうだなと思って、出来るだけコンスタントに貯められればと思い、またブログ機能に手を伸ばしてみることにした。一時は音楽好き、というのが逆にコンプレックスに思うこともあったが、正直いまはいろいろどうでもいいや。ブログなんてツールも時代遅れ感があって、ここまでザクザク書いてみてなんか楽しくもなってきた。

習慣的に書けるよう一回目からあまり入れ込み過ぎないように、と思いさらりと...


最近は、あらためて6、70年代のフォーク/S.S.W.作品を好んでよく聴くのだけれど、特にお気に入りなのが季節柄か、Bruce Cockburn、Tony Kosinecといった、ちょっと凍てついたヒヤリとした感触と、牧歌的な温い感じを兼ね備えたカナディアン・フォーク。ちなみに余談ですがBruce Cockburnは、あのECMからのリリースも決まりかけていたとかいなかったとか話がありますが、もしリリースが決まっていたら少なからずジャズのフォーク的な視点の在り方が今どうなっているのかとても興味深い所。

さて、今日は久しぶりに元気出るかなと思いレコードを散策しに出かけたのだけれど、以前から某珍屋で狙っていた1枚がまだあったので購入。

『Aoxomoxoa』あたりのGrateful Dead直系のサウンドを聴かせたカナダのサイケデリック・フォーク・バンドKensington Market(『Avenue Road』というアルバム、めちゃくちゃ良いのでおすすめです!)のギタリストだったLuke Gibsonのソロ唯一作。ちょうど16年にMapache Recordsからアナログ・リイシューされたので人気も高騰中?でしょうか。

オリジナルは、同じくカナダの名S.S.W. Murray McLauchlanのプロデューサーを務めるBernie Finkelsteinによって設立された、お馴染みTrue North Recordsからのリリース。

『雪の世界』の邦題でお馴染みの、Bruce Cockburn『High Winds White Sky』や『Salt, Sun And Time』と同じく、トロントのローカル・スタジオThunder Soundでの録音。どうでもいいけどAnthony Braxton『Trio And Duet』もここで録音された模様。割と天井の低そうなデッドな響きなのでちょっとした地下室か何かだったのかのと想像する。


1曲目の「Virginia」ピアノとギターの簡素なバッキングを中心に、複弦使いを多用したカントリー系のフィドルが入るものの、泥臭さの無い洗練されたアレンジに、渋みの少ない比較的さらりとした歌声はとても現代的に感じる。歌詞が付いてないので、外国語音痴の自分には皆目なにを歌っているのか分からないけれど、タイトルからホーボー的な事が歌われているのでしょうか。「Flow」後半のピアノのトリッキーなバッキングもなかなかオルタナティブ。エレキに持ち替えての「All Day Rain」はソウル・フィーリングも感じさせるが、やはり塩梅が絶妙でスワンプ特有の臭みみたいなものはなし。Sandro PerriのS.S.W.ワークスが好きな方なんかも、すんなり聴けるのではないでしょうか、、そんなことないか、、、

とまあ、ほんと日記程度に続けられればと思いまして。



A1 Virginia
A2 Hotel
A3 Windy Mountain
A4 Did You Ever
A5 Flow
A6 All Day Rain
B1 Full Moon Rider
B2 Lobo
B3 Another Perfect Day
B4 Angel
B5 See You Again