2019年9月15日日曜日

190915

とても悲しいニュースです。癌で闘病中だったSteve Hiettがフランスのモンペリエで亡くなりました。

昨年、僕が作ったEPで彼の撮った写真をどうしても使いたく、そして叶うならば彼がかつてミュージシャンとしてリリースした唯一のレコード『Down On The Road By The Beach』から1曲カヴァーさせてくれないかというお願いのためメールのやり取りなどしていたので、まさか!という気持ちでいっぱいです。写真を使いたいと言う話はともかく楽曲をカヴァーしたいという話にビックリしながらも喜んでくれて、完成した音源を送ったらとても気に入ってくれている様子でした。今月末に『Down On The Road By The Beach』のアナログ・リイシューと、未発表音源のリリースを控えていて、聴いたらまた彼に連絡を取ってみようと思っていた矢先で、とても驚いています。

亡くなったのは19年8月28日。夏の暮れにひっそり息を引き取ったのはなんとも彼らしいというのでしょうか。
レコード『Down On The Road By The Beach』がリリースされた当時に一緒に出版された同名の写真集をぱらぱらめくりながらレコードを聴いているのですが、雲ひとつない深いブルーが目に沁みます。彼の写真は深い色彩が印象的ですが、彼の弾くギターの音色もまた、目をつむれば、真夏の照りつく浜辺から見上げた空のように深い青や、湿気のないサラサラの砂の色、プールサイドの水色、口紅やパラソル、海辺の街の、赤や黄やエメラルド色の景色が容易に浮かび上がってきます。音楽から景色が浮かび上がるなんてよくいう話しかも知れませんが、彼の音楽の発色は本当にスペシャルで、だれの音楽とも似ていない独創的な音楽でした。そして、そんなパキッとした発色とは対照的に、レコードを聴けば聴く程、地に足がついていないというのか、ずっと水中を漂っているような、浮遊する繊細な指さばき、ナイーヴなヴォーカルの響きにどんどん引き込まれていきました。『Down On The Road By The Beach』というレコードからは本当に多くの感覚を刺激され影響を受けました。深く明るい色を放つ彼の写真や音楽を眺め聴きながら、彼の写真や音楽と彼が死んでしまったという事が、あまりにもかけ離れた事のようで、どうにも気持ちの整理のつかないままこんな時間になってしまいました。本当に、本当に美しいレコードをありがとう。

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