2016年12月9日金曜日

The New Troubadours ‎– Winds Of Birth


The New Troubadours ‎– Winds Of Birth

The Lorian Association
1974

さて、昨日とは打って変わって、早速よくわからないオブスキュアな宗教系アシッド・フォークを1枚。

普通に音楽を聴く分には本当にだれも興味のないことなのだと思いますが、キリスト教系の宗教団体によるクリスチャン・コンテンポラリー・ミュージックなんてレコードが無数に存在します。構成員の方々の間で楽しむのか、はたまたプロモーションなのかよく分かりませんが、、C.C.M.は、A.O.R.的なサウンドのものを一括りにさす場合が多いですが、宗教レコードはその他にも、ソフトロック的なのからモダンポップ、フォークやら、内容もモロにジーザスなのから、キリスト教以外の説法系、ニューエイジ思想のメディテーショナルなものまで種々様々。日本ではあまり馴染みの無い文化なように思いますし、あちらのお国でいまSoundcloudやBandcampなんてので、そんな音楽がリリースされているかは分かりませんが、とりあえずレコード時代にはそんなものが、数えきれない程リリースされております。その中には大手レーベルからリリースされるメジャー盤に全く引けを取らない好内容のものも少なくなく、特に個人的に好きで集めてるのがフォーク/S.S.W.モノで、Linda Perhacsみたいなのが結構あって面白いです!


現在も活動を続けるロリアン・アソシエーションなる宗教団体の方々によって作られた作品。その理念はというと"人々の霊的な衝動によって、喜びのある生活の新しい可能性を開き、個人的および社会的な変容の機会をもたらし、新しい時代の人間社会を生み出すことを云々..."ということで、ニューエイジ系のそれということでしょうか。『Winds Of Birth』というタイトルから、そんな香りがします。




オブスキュア・フォーク・ファンのハートをど真ん中直球で射抜く、モノクロの簡素なジャケットから素敵です。以前、某ユニオンにて青いジャケのヴァージョンを見かけましたが、調べた所、どうやらこの2種類が世に出回っている模様です。


メンバーの所在はまったくもって分かりませんが、恐らく全員アマチュアのミュージシャンたちによるものと思われます。アコースティック・ギターやピアノ、フルートといったアシッド・フォーク定番の編成を中心に、ドラム、トロンボーンやシンセサイザーなんかも加わり、メロウ・アシッドなサウンドに、フワリと浮き上がるようなリヴァービーなサウンド。男女ヴォーカルが曲毎に入れ替わり立ち替わり、時折、混声といった塩梅ですが、やはり澄んだ歌声の女性ヴォーカル曲が抜きん出ています。ローカルなソフト・ロックとアシッド・フォーク盤で全曲良いなんてものは殆ど無いとも思えるので、これは当たり盤といって間違いないでしょう。


押し曲としては流麗なガットギターのアルペジオに導かれ、フワフワしたフルートが漂い、Linda Perhacs系の澄んだ歌声が最大限に生かされた「The River」でしょうか。サビで重なり合うハーモニーがたまりません。メディテーショナル。リヴァーヴをたっぷり含んだウェットな音響もマッチしてます。同系統の「Symbius」、マリンバ入りの「Let New Worlds Grow」といった楽曲も秀逸です。12弦ギターを用いたサンシャイン・ポップ調の「Winds Of Birth」は渋めのテナー・ヴォイスと、浮遊感ある女性コーラスとのハーモニーが良いです。案外メジャー作品ではありそうで見かけない音の感じです。

なんだか近頃のあくせくした日々に、ふと目を閉じて耳を澄ますことも少なくなったなあと思う。音楽も映画も、生活もなんでも、目を閉じてぼんやりしている間に新しい情報が入り込んでいて、追いかけなくても良いのですが、そういった状態に置かれているというだけでなんだかいっぱいいっぱい。

さてさて話を戻して、当たり前ですが、超ローカルな作品ばかりのC.C.M.作品。版権もややこしそうでApple Musicなんかで聴けるのは皆無に等しいですが、日本人は歌詞をあんまし気にしないが故(?)、ここいらでは割と出玉が多いように思うので、見つけたら是非、、



A1 Winds Of Birth

A2 Let New Worlds Grow
A3 The River
A4 Gifts Of Love
B1 Earthseed
B2 Happy Song
B3 Symbius
B4 Canticle
B5 Song Of The Avatar

2016年12月8日木曜日

Luke Gibson ‎– Another Perfect Day


 Luke Gibson ‎– Another Perfect Day

True North Records ‎– TN 6
1971

大学生入学と同時にレコード・プレイヤーを手に入れてからは、午後の授業の前にレコード屋に足を運び、大きめのカバンに何枚かのレコードを携え、机に突っ伏しよくノートを
よだれで浸していた。それまでに買い貯めていた定番アルバムをレコードで買い直すのが常で、痛んだ盤がパチパチと音を立てれば立てる程に満足をした。3年からキャンパスが都内に変わり、都内のユニオン主要店舗の殆どが定期券内になり、それからはろくに授業も出ず、日が暮れるまであちこち餌箱漁りに明け暮れていた。

その頃、ちょうど熱を入れていたのがギター・マガジンで育った自分にとって全くの未開の地であった、Bob DylanやNeil Youngになれなかった星の数程いるアメリカとカナダのS.S.W.作品を集めることだった。当時はレココレやディスク・ガイド本も読んでいなかったので、ろくに知識もなかったが、試聴はせずにジャケットとクレジットに映る楽器編成なんかでこれだという物を吟味して買うのが常であった。The Floating House BandやJay Bolotin、Georgie Rizzoあたりの盤も、もちろん知っている人は当たり前に知っている名盤だけれど、そうやったたまたま出会うことになった。
以前ネットで読んだオブスキュア・フォークを気が狂ったかのように取り上げているブログの一文で"どうしても1人だけ顔も名前も思い出せない学生時代のクラスメイトのような..."というような締めの文章をふと思い出すが、きっとそうした音楽に熱を上げていたのは多分そんな所に、魅力という言葉はあまりしっくり来ないけれど、なんとなく儚さみたいなものは感じていたのだと思う。

ちょうどそんな頃に森は生きているというバンドを始めた。そして始めたばかりのバンドのコンテンツとして、専門的な知識はないけれどそういった音楽を何の気なしにブログで書き溜めていた。それをたまたま当時P-VINEにいたS崎氏が目にして(たしかHill,Barbata,Ethridgeの『L.A.Getaway』を紹介した写真の横にGellarsの『ガテマラ』が入り込んでいたやつ)バンドに声を掛けてくれたのだったと記憶している。


ざっと思い出話...特に何が言いたいとかいうわけでもなく、また自分の好きな音楽を集めてその時に思ったことを書き溜めておくと、あとあと読み返した時にちょっと笑えそうだなと思って、出来るだけコンスタントに貯められればと思い、またブログ機能に手を伸ばしてみることにした。一時は音楽好き、というのが逆にコンプレックスに思うこともあったが、正直いまはいろいろどうでもいいや。ブログなんてツールも時代遅れ感があって、ここまでザクザク書いてみてなんか楽しくもなってきた。

習慣的に書けるよう一回目からあまり入れ込み過ぎないように、と思いさらりと...


最近は、あらためて6、70年代のフォーク/S.S.W.作品を好んでよく聴くのだけれど、特にお気に入りなのが季節柄か、Bruce Cockburn、Tony Kosinecといった、ちょっと凍てついたヒヤリとした感触と、牧歌的な温い感じを兼ね備えたカナディアン・フォーク。ちなみに余談ですがBruce Cockburnは、あのECMからのリリースも決まりかけていたとかいなかったとか話がありますが、もしリリースが決まっていたら少なからずジャズのフォーク的な視点の在り方が今どうなっているのかとても興味深い所。

さて、今日は久しぶりに元気出るかなと思いレコードを散策しに出かけたのだけれど、以前から某珍屋で狙っていた1枚がまだあったので購入。

『Aoxomoxoa』あたりのGrateful Dead直系のサウンドを聴かせたカナダのサイケデリック・フォーク・バンドKensington Market(『Avenue Road』というアルバム、めちゃくちゃ良いのでおすすめです!)のギタリストだったLuke Gibsonのソロ唯一作。ちょうど16年にMapache Recordsからアナログ・リイシューされたので人気も高騰中?でしょうか。

オリジナルは、同じくカナダの名S.S.W. Murray McLauchlanのプロデューサーを務めるBernie Finkelsteinによって設立された、お馴染みTrue North Recordsからのリリース。

『雪の世界』の邦題でお馴染みの、Bruce Cockburn『High Winds White Sky』や『Salt, Sun And Time』と同じく、トロントのローカル・スタジオThunder Soundでの録音。どうでもいいけどAnthony Braxton『Trio And Duet』もここで録音された模様。割と天井の低そうなデッドな響きなのでちょっとした地下室か何かだったのかのと想像する。


1曲目の「Virginia」ピアノとギターの簡素なバッキングを中心に、複弦使いを多用したカントリー系のフィドルが入るものの、泥臭さの無い洗練されたアレンジに、渋みの少ない比較的さらりとした歌声はとても現代的に感じる。歌詞が付いてないので、外国語音痴の自分には皆目なにを歌っているのか分からないけれど、タイトルからホーボー的な事が歌われているのでしょうか。「Flow」後半のピアノのトリッキーなバッキングもなかなかオルタナティブ。エレキに持ち替えての「All Day Rain」はソウル・フィーリングも感じさせるが、やはり塩梅が絶妙でスワンプ特有の臭みみたいなものはなし。Sandro PerriのS.S.W.ワークスが好きな方なんかも、すんなり聴けるのではないでしょうか、、そんなことないか、、、

とまあ、ほんと日記程度に続けられればと思いまして。



A1 Virginia
A2 Hotel
A3 Windy Mountain
A4 Did You Ever
A5 Flow
A6 All Day Rain
B1 Full Moon Rider
B2 Lobo
B3 Another Perfect Day
B4 Angel
B5 See You Again