2017年4月6日木曜日

Saint Jacques ‎– Saint Jacques


Saint Jacques ‎– Saint Jacques

GRT ‎– GRT 30005
1971

"木漏れ日フォーク"なんてあってないような音楽ジャンルの呼称があります。"ぽかぽかとした晴れ空のもと、こんな日には部屋でグータラしてるのももったいない、ちょいと近所の草っぱらにでも出かけ、木陰で寝転び見つめた枝葉の間から、ゆらりと差し込む光にまどろめば、なんだかとっても穏やかな気持ちになってくるような、あの瞬間に、小鳥のさえずりと共に聴こえてきそうな音楽"という、なんともくどい言い回しですが、そうとしか言い得ないような音楽があります。例えばHeronの2枚のアルバム(オリジナルはジャンクのワゴンRくらいしますが、ありがたい世の中で今はapple musicで聴く事が出来ます!)なんて正にそんな呼び方がしっくりくる作品で、先日まさかの来日を果たした彼らがインタビューで"日本ではそんな風に呼ばれているんだね!なんかその呼び方しっくりくるよ!"なんて話をしてたのは印象的でした。
同じような音楽ジャンルでサンシャイン・ポップは初期のThe Byrds(オキャンなガールポップなんかもさんな風に呼びたくなってしまう事もありますが...)、木漏れ日フォークはCSN&Y「Our House」派生と個人的に捉えています。この辺はまあどっちでもよいのでしょう。


本盤はとある機会があって一度聴いた事があってずっと探していたCSNフォロワーの唯一作で、こちらも"木漏れ日系フォーク"という言葉がしっくりときます。
全曲オリジナル。作曲クレジットにDavid Kaufmann 、Peter Derge 、Rolfe Wyerとありますので、ジャケに映るいかにもフラワームーブメントの残党といったルックスのムサい3人の男は、それぞれいずれの3つの名前に当てはまるのでしょう。ゼベダイの子のヤコブに由来する(?)グループ名から察するに、こちらもC.C.M.系のグループなのでしょうか。さらっと聴いた歌詞の感じとかはあまり説法臭くなく、もっとパーソナルなものに思われました。
メンバー全員曲を書きますが、おそらくギターやピアノにフルート、ヴァイオリンも操るPeter Dergeなる人物がこのグループのブレインだったようです。 ちなみに3人とも、その後ミュージシャンとしての録音キャリアは無に等しい模様です。


さてさて、この手のマイナー盤を足を使って見つけ出すのはなかなか骨の折れる作業なのですが、たまたま安く見つかったので即購入。そしてなんと未開封シールドの状態でした。コレクターの人には怒られそうですが、迷わず親指の爪でががっと開封。ジャケットをパタパタさせると1971年から缶詰されていた空気が、なんとも甘い香りを放ちながら漂ってくるようです。

1曲目こそ売れる気満々のブラス入りファンキー・チューンですが(それでも全然聴けるナイス曲)、続くA-2「Susan」は、アコースティック・ピアノ&ギターの優しげな伴奏に、エコーのたっぷり掛かったフルート、そして甘いハーモニーが織りなす、正に"木漏れ日チューン"。Americaを彷彿とさせるメロウ・フォークA-5「Sword Of My Sorrow」、A-6「The Young Girl (Kathy's Song)」、Curt Boettcherワークスを思わせるソフトロックよりのB-1「She's Beautiful」、B-4「But It's True」、ほのかに香るアシッドなムードは、なんとなく今の耳にあってるようにも思いました。A-4「A Castle Of Sand」は、なかなか入り組んだ構成のブラス・ロックで、Blood Sweat & Tears + CSNといった趣。ラストB-5「Say What You Believe」は、メロディー感、アレンジ、折り重なるコーラス、もう完全にCSN直系ですね。良い曲です!

Cheryl Crutsinger(他の仕事は見つかりませんでした)なる人物のライナーが見開きに納められていました。はじめて彼らのハーモニーを聴いた時に、空いた口が塞がらなかった事。この作品は、この新しいグループが誇りに思うことができる傑作です。 すべての人がこのアルバムを楽しんでくれると信じているということ。
Cheryl Crutsingerが、彼らを近くで応援していた人物なのか、ちょっと雇われた筆のぱっとしない音楽ライターなのか分かりませんが、この手の当たり前に売れる事のなかったローカル盤のライナーって、いろいろ複雑な気持ちになります。とりあえず、みんな元気にしているのでしょうか。


A1 Rubies 4:01
A2 Susan 2:50
A3 Recollections Of A Lost Childhood 3:00
A4 A Castle Of Sand 2:31
A5 Sword Of My Sorrow 2:55
A6 The Young Girl (Kathy's Song) 3:16
B1 She's Beautiful 2:25
B2 The Saga Of Trail Blazin' Dave 2:46
B3 Peter's Song 2:26
B4 But It's True 4:07
B5 4:04